れーこの叫び
ボヤキと叫びのバックナンバーから
名作をまとめて 本にしました
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ビビリの系譜


レーコは名古屋に長期滞在していました
まあ両親の色々な事を片すためなのだが、
その中におしょろい様をするという事もある
いやそれがメインだったりする
それは何かと言うと、お盆にご先祖様が還ってくるから
13日の迎え日から15日の送り日まで
朝・昼・おやつ・晩のもてなしをして送りだすという行事だ

そんなのホントに帰ってくるわけはないから
迷信だと言えばそれで割り切ればいいのだけど・・・
でも、れーこはダメなんだなあ
小さい時から家族がやってるのを見て育ち、
あまつさえおばあちゃん子でいろんな俗信を聞いて育った

「おしょろい様は早く帰りたいから馬で帰ってきて、
戻る時は名残惜しみつつ戻るから牛で帰るんだよ」
「餓鬼が一人くっついてきて、おしょろいさまの食べ物をよこどりするんだよ、
だからお位牌より一つ余分にお膳をつくるんだよ」


こんな事を聞いて育って、
今でも夢枕獏さんの陰陽師とか、京極さんのシリーズが大好きな私は
半分以上本気でそれを信じていたし、今でも信じているかもしれない
そのような光景をまざまざと想像してしまうのだ

でも、自分は墓などいらないし、戒名などばかばかしいと思っている
死んだら何もなくなるだけだし、何も後のことで変わってくることはない
お盆に無関心の母の方が無縁仏になることを凄く恐れている
不思議な事だ


まあそんな事情で実家のお盆様をやりに帰り
この間は娘を連れていったからムスコを連れていくことにした
やはりいつか人間は死ぬものだし今孫を見せておこうと思った次第である

行くのにいつもは夜行バス愛用のレーコだが
夜行バスが繁雑期で値段が高騰しており
「これじゃあ新幹線との差があまりないじゃん」だったので新幹線で行くことにした
ムスコは中学生だから学割で行けばさらに安いし、と思い
その日の出発だったのに学校に行って学割証明書をもらってきた
さてこれで万全だと思っていたのよ
だってわざわざ学校まで行って校長印の証明書をもらってそれ以外に何がいるっていうの
そのために緑の窓口に並びましょうとも
ええ、どんなに込んでいようとも、自動販売機ですぐ買えようとも2割引は大きいわ

結構な時間を待って、やっと番が来た
「学割でお願いします」やれやれとばかりに学割証明書を出す
「はい、学生証の提示をお願いします」と機械的なにーちゃんの声
へ、学生証?????学生証だってええええええ????!!!!
「いるの!!!???そんなもんが!!!」
「えーーーーいるんですよう、一応規則でしてねえ、ほらこの証明書の裏にも書いてあるでしょう?」
「持ってないす、だめですかあ」
「一応規則でしてねえ、新幹線は必ず監察がありますしねえ」
「えーーーーーーー、わざわざ学校に行ったのに、貰ったのに・・・」
もうれーこは半べそである、半分脱力している
ああ、2割2割2割、頭の中で2割がぐるぐる回っている
「じゃあ、しかたないですからふつうで買いますよ、規則なんでしょ」
「いいんですか」
「いいもなにも売ってくんないんでしょ、規則だから」
完全にすねているれーこ
「いえね、売るときはねていじぎむはないんですよう、監察の時にねそちらで対処できたらなんてね
これは独り言なんだけどねえ」
そーゆーことは早く言え!!!
「学割で売ってください、あとはなんとでもします!!!」


こんなショートコントを窓口で繰り広げ学割の切符とふつうの切符をやっとこさ手に入れた
なんだ、兄さんも人が悪い
売ってくれるんだったら
「携帯義務があるんですよ、今度から気を付けてくださいね」で済ませてくれればいいものを
よっぽどレーコが驚愕の顔をしたのだろう、退屈な窓口業務の娯楽にしたかったのだな


レーコは第1難関突破とほくほくしているとは対称にムスコがチョーー不安そうな顔をしている
「監察でどういうの???」
「なくしました、ウンそれで行こう」
「それで何か言われたら???」
「いいよ、追加料金払うだけだし、多分注意で済むから、ノーチェックかもしれないし」」
「僕知らないからね、おかアが切符出してよ」
「大丈夫だって、あんたはどっからどう見ても中坊うじゃん」

ちょっとしたかけができる私は少しわくわくしている
ますますムスコは不安な顔でいる、不安を越して不機嫌な顔をしている



実際はノーっチェック
あっけらかんと監察はすみ、学生証のガの字もでませんでした

んーーーー、この息子の顔はどこかで見たような・・・・・

・・・……………………

あ~―ーーーーーーーわかった!!!!

淳二さんと一緒だ!!!!!



いままで外出先でアクシデントが起こった時レーコはどう問題対処しようと燃えて気分はわくわくしているのに
淳二さんはなんで決めたとおりに物事行かねえんだと先が見とうせないことにいらいらしてどんどん不機嫌になる
気分がハイ状態のれーこは何でこんなに不機嫌なんだか、そんなら自分でやりゃいいじゃないかと不機嫌になる
のパターンと一緒の顔なのだ

冷静に分析ができたのはダンナじゃなくムスコだからか



あああああああ、だんなと一緒の性格かあ

こいつあ、ビビリだ

非常に納得しつつ、
こんな大嫌いなところが似るんかいとがっかりしつつ新幹線で名古屋に向かうレーコでありました
ムスメは夏季バイトにあけくれ休む暇なくクラブの合宿、勤労大学生活満喫し
そんなことを思われていると露ぞ知らない淳二さんは一人所沢に残りオリンピックを満喫していたのでありました


河合の実家で淳二さんの弟にムスコは
「お兄にしぐさがそっくりになってきたな」と言われ
「そんなはずはない」と大否定していたが
母は新幹線の事件を思って深くうなずくのであった


一番、嫌なとこがにるのね

救いのない系譜じゃのう



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